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東京五輪の実態(2) 28隻の黒船がやってくる

 

東京五輪の実態(2)28隻の黒船がやってくる

 

 いろんな人から話を聞かされているうちにだんだん長くなってしまいました。森氏への『入院ノススメ』は次回にして、今回は間もなくやってくる「黒船」のことを書きましょう。

 

 江戸末期にペリー提督に率いられたアメリカ艦隊が浦賀沖に現れ、幕府が右往左往したことはみなさまご存じでしょう。その中で井伊直弼大老が断を下してとりあえずの危機を回避するのですが、井伊大老のやったコトを全く理解できない狭量な水戸藩士が無謀にも大老を暗殺したのです。なんでこんな話をいまするかと言うと、日本にはまもなく数多くの黒船がやって来るからです。
 

 オリンピックの競技会場などは最終的には国際オリンピック委員会(IOC)が決めるのですが、そこまでの過程では国際競技連盟が東京の組織委員会と話をして原案を作るのです。(「国際競技連盟」とは「国際水泳連盟」とか「国際フェンシング連盟」とかのことです)いま話題になっているボート会場やバレーボール会場についても内定させるのは国際ボート連盟や国際バレーボール連盟なのです。決して日本のボート協会とかバレーボール協会ではありません。

 

 夏のオリンピックには28の競技があります。(東京ではさらにそれに臨時に5競技加えて33競技が実施されます。空手とかサーフィンとかがこの追加競技です。)28の国際競技団体の多くは、IOC本部があるスイスのローザンヌに本部がありますが、それ以外では国際陸連はモナコ、トライアスロンはカナダのバンクーバー、国際サッカー連盟(FIFA)はチューリヒ、国際テニス連盟はロンドンなど、ほとんと欧州に本部があります。オリンピックで審判や競技役員を認定し派遣するのはこれらの国際競技連盟なのです。

 

 彼等の目は先日までリオデジャネイロに向いていました。本当に自分たちの競技の会場が完成するのか、治安が悪い中で競技が実施できるのかなどでリオは疑わしい事ばかりだったからです。しかしリオ・オリンピックは何とか終了しました。そしてこれら28の国際競技団体の目はこれから東京に集中的に注がれるのです。国際競技団体は会場設計や建設の問題から始まり、競技を行う場所の設え、国際競技団体の役員や幹部の宿泊施設、輸送、ホスピタリティーなど様々な分野でこれから組織委員会に注文をつけてきます。国際競技団体の幹部なんてカネに汚く偉そうなのが多いので、彼らの要求には無理難題もたくさんあり、そのために会場の改装がもう一度必要になり税金が投入されることもあります。

 

 前回書いたように、外国語ができる人がほとんどいない組織委員会にその対応ができるでしょうか。リオ五輪の前まで組織委で国際競技団体との連絡調整の責任者をやっていたのは夏のオリンピックとは関係ない日本スキー連盟の人でした。都庁の人に聞いたら、もともとはスキー界の大立者、西武の堤義明さんの通訳とパシリをやっていた人だと言うことです。さすがにこの人ではアブナイということで、リオ五輪が終わってからこの人を更迭し後任には室伏広治さんを充てました。

 

  しかし、安心なんか全くできません。28の国際競技連盟はこれから次々に無理難題を組織委員会や東京都に言ってくる段階に入ったからです。幕末のペリーの黒船は浦賀へ来ただけでしたが、今度の「黒船」は28の方向から一斉にやってくるのです。函館にも新潟にも神戸にも長崎にも舞鶴にも横浜にも黒船がそれぞれ何隻も来てオリンピック版の「開国と通商」を要求するワケです。

 

 浦賀に黒船が来た時、江戸ではこんな狂歌が流行りました。

「太平の眠りを覚ます上喜撰 たった4はいで夜も眠れず」

喜撰というのは緑茶のブランド名で宇治の高級茶のことですが、もちろん「蒸気船」とかけてあるのです。4杯で夜も眠れなかった幕末の日本人ですが、今の組織委員会の人たちなんて28杯も上喜撰を飲んでカフェインまみれになっても逆に眠ったまんまじゃないかと思うのです。目が覚めたらワケもわからず佐幕攘夷論者たちと同じことをやるんじゃないでしょうか。これもトップに見識が全くないからです。

 

 最近、こんな記事を見かけました。

調査中間報告にスポーツ界、猛反発 長時間の議論、泡に

都政改革本部の調査チームが29日、2020年東京五輪・パラリンピックの会場の建設中止など大幅な見直しを提言したことに、スポーツ関係者や競技団体は反発した。この日の大会組織委員会の理事会でも、批判的な意見が相次いでおり、波紋が広がっている。バレーボール会場の有明アリーナは都内で初の1万5000人規模の室内競技場として建設される予定だが、調査チームは既存施設の利用を提言した。日本協会の林孝彦事務局長は「今後、国際大会を開催するためにもレガシーとして建設すべきだ」と理解を求めた。

毎日新聞9月29日

 

日本ボート協会会長「ふさわしくない」会場変更難色

日本ボート協会の大久保尚武会長(76=積水化学工業元会長)が3日、小池知事と面会後に取材に応じ、宮城県登米市にある「長沼ボート場」での五輪開催に難色を示した。直線距離で東京・晴海の選手村から350キロ以上、仙台からも50キロ以上離れており「田舎ですから、道路も1車線に近い。陸上整備や宿舎も相当必要になる。予算的にも大変だろう」と話した。さらに「水面は非常に良いが、大きな湖の真ん中にあって、両側に陸路がない。この場合、世界的には自動車も走れる浮桟橋を走らせないといけない。かなりお金がかかる」と競技施設そのものの問題点も指摘した。日刊スポーツ10月3日

 

 こんな記事はよく見かけますが、この人たちの言うことが実は何の意味もないことは、ここまでの説明で皆様にはおわかりだと思います。ボート会場を決めるのは、IOCと国際ボート連盟と組織委、バレーボール会場を決めるのはIOCと国際バレーボール連盟と組織委なのであって、日本のボート協会やバレーボール協会は何の権限も責任も持っていないからです。

 

 毎日の記事では「長時間の議論が水の泡」と書いてありますが、組織委は国際競技団体と長時間の議論なんかしたことは一度もありません。「ヨロシク、ヨロシク」と言ったのと「あなたたちのご希望に沿います」と相手の靴を舐めるみたいに平身低頭しただけなのは誰もが知っています。会場に関してしっかり説明したのはむしろ招致の段階でした。国際競技団体に賛成して推してもらうために女子バーレーボールの元選手が世界中を精力的に回ったのは知られています。開催が決まり組織委になったら突然ダメになったのは、やはりトップの不学無術以外のなんでもありません。

 

 組織委が森会長の指示でやったのは日本国内の競技団体と「談合」しただけのことです。これは組織委の「競技団体の担当」として日本体育協会の元専務理事が加えられたことからも自明です。この人は外国語なんか一言もしゃべれず、これまで旧態依然の日体協で日本の競技団体を担当してきた人なのですから。(この人も、体協の元会長だったあの元総理の子分の一人だと言われます。)森会長のインバウンドな頭では「競技団体との協議」と言うと国内の何とか協会しか思い浮かばないのでしょう。

 

 28隻の黒船が来るまでに時間の余裕はありません。(現に国際ボート連盟の会長がいま日本に来ています。東京の組織委は、実質的な正面からの論議ではなく、日本らしい「おもてなし」とお得意の「先延ばし」で誤魔化そうとしていますが、向こうは自分たちの利害に直結した真剣勝負の話をするのですから、そんな表面を取り繕っただけのことでは何も解決するワケがないのです。

 

 このままでは28隻の黒船に乗ってくる人たちの言いなりになるしかありません。相手を知らずに合理的な判断などできるワケがないからです。孫子の兵法にある「知彼知己者、百戰不殆」(彼を知りて己れを知れば、百戦殆うからず)という言葉は有名ですけど、これには続きがあって、「不知彼不知己、毎戰必殆」(彼を知らず己れを知らざれば、戦うごとに必ず殆うし)というのです。

 

 いまの組織委員会は、その無知と経験者を排除する体質のために、戦うごとに必ず危ういのです。負け続けるに決まっているのです。そしてその度に私達都民の税金を無責任に垂れ流してしりぬぐいをしようとしているのです。今の組織委員会は一度解散して再編成するしかないと思います。

 

(続く:次回は「森氏への『入院ノススメ』)

 


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