<< 神奈川県知事の非常識、東京都知事の常識 | main | 成人年齢引き下げに男性は「賛成」、女性は「反対」 >>

【書評】 「中国に人民元はない」(文春新書)

JUGEMテーマ:中国ニュース
 

book 「中国に人民元はない」という、オヤッと思わせるタイトルで読ませるという、ちょっとキワモノじみた題名ですが、内容は中国人の私が読んでも面白いし、示唆に富んだ本です。全部で30章に細かく分かれていて、それぞれの章のタイトルが「中国には○○はない」という構成になっています。

 

 例えば、中国に裁判所はない、中国に地方公務員の汚職はない、中国に権力と権利との違いはない、中国に農民の失業はない、などの項目が並んでいます。一つだけ謎解きをすると、中国になぜ地方公務員の汚職がないかというと、中国の公務員は全部が国家公務員であって、地方公務員という存在がないからというわけです。多くの章がこのような筋立てになっています。

 著者の田代秀敏さんは一橋大学経済学部卒業後、証券会社エコノミストなどを経て、今は産業コンサルタントをしている方です。何度も中国へ行かれ、中国企業の合弁やM&Aなどに関与しておられるようですが、この本の内容から見ると中国に住んだことはないようです。

 

 とても鋭く且つ正確だと思った指摘をいくつか抜書きしてみます。


◇ 中国と日本の法律の違いを述べたところで、

「『中国が日本と違うこと』は中国リスクではない。『違いを知らずに、日本の常識や通念を押し付けること』こそが中国リスクなのだ。」

 

◇ 都市戸籍と農村戸籍について述べたところで、

「中国で農民は職業ではなく、階級であり身分である。」

 

◇ 中国を市場としてみた場合のことを述べたところで、

「『13億の巨大人口』は『13億の巨大市場』を意味しない。中国には全国を覆う市場、全国市場圏がないからである」

 

 このような事情は日本ではなかなかわからないと思いますが、中国人の私が見ても、まったくその通りだとうなづけます。

 

 ただちょっとした勇み足はあります。これが理由で、著者の田代さんが中国に住んだ事がないだろうと思ったのですが、バスや地下鉄の定期券のことです。「中国に定期券や回数券はない」という一章があるのですが、これは明らかに間違いで、中国にも定期券はあります。

 

『車掌にカードを見せて乗り降りしている者がいる。あれは定期券に違いないと思って、どこで買えるのかと一緒にいた中国人に尋ねたところ、市販されていないという。どうも、特別な立場にいる者だけが、使えるものらしい。』(本書123ページ)

teiki

 これは、田代さんと一緒にいた中国人がよっぽどおバカだったんじゃないかと私は思います。

左の写真は私のバスの定期券で、毎月シールを買って貼り付けてもらうと有効になります。「职工」と書いてあるのは「職工」で、職員と労働者用、つまりは「通勤定期」だということです。こういう紙の定期券は、北京では2006年4月一杯で廃止になり、それからは右上の青色のICカードに替わりました

 このICカードを持ってバスに乗ると料金が4毛(約6円)ですが、現金で払うと1元(約15円)なのです。ICカードは地下鉄でも「パスモ」みたいに使えます。(地下鉄は2元) ICカードは最初に、確か20元ぐらいの保証金を取られますが、それからはチャージするだけで、日本のICカードを同じです。

 
 この本ではクレジットカードについての記述も不正確なところがあります。また、雑誌に連載されたものを本にしたため、章によっては前の章の引用が長くて冗漫に思える部分もありますが、まあ小さな傷は問わない方がいいのでしょう。

 

文春新書 「中国に人民元はない」

田代 秀敏著

文藝春秋社(2007/12/20 出版)

ISBN 9784166605880

価格: ¥745 (税込)


コメント
FREEbyFREEさま、
コメントいただき、有難うございました。

一昨年、東京へ移ってきたときに私も同じことを感じました。中国の、或いは私の場合は北京のと言った方がいいかもしれませんが、ごく普通のことが日本では全く知られていないのです。日本では中国関係の本が書店に山積みになるくらい発行されているのに、ごくフツウのことが知られていないとすれば、そういう本はフツウのことを書いていないのだと思います。

日本で一番不便なのは、銀行が土日の二日間閉まってしまうことと、土日は自分の銀行で自分の口座からお金を引き出すのに手数料を取られることです。中国の銀行の不良債権処理の方法など日本では散々非難されていますが、少なくとも利用者にとっては日本の銀行は「商売」をしてる気がなく、陋習に胡坐をかいているだけに見えます。

世界とか国際的とかいう言葉が好きでありながら、実は自分の事しか考えない癖を持った日本人の閉じた気持ちが、おっしゃるような「日本の情報操作」をしている気がします。こういう癖は、日本人の特性ではありません。引きこもりとオタクの蔓延と軌を一にして始まったのだと思います。
  • 趙秋瑾
  • 2010/03/28 11:57 PM
日本人にとって、近くて遠い国と言われて久しかった中国ですが、自分自身、北京で暮らして早5年。多くの日本人が一般人として生活しているのに、TVや新聞、書籍と言ったメディアから日本へ入る情報に、不正確な部分の多いことがいまだに不思議です。カード式のパスやATMが24時間、休日でもOKな銀行窓口など、利便性は日本と変わらないところも多いのに、なぜか『日本より』とあえて心証を持たせるような構成にしていると感じるのは、気のせいでしょうか。中国が報道を規制して、情報を操作するのは周知のことですが、日本がそれに倣うような事をする意味はなんなんでしょうか。深層心理に、長く鎖国をしてきた後遺症としての民族意識が残っているせいでしょうか。それとも大陸的思考と島国的思考の違い、ですかねえ。
  • FREEbyFREE
  • 2010/03/28 5:46 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>
selected entries
categories
archives
recent comment
recent trackback
  • 松沢神奈川県知事はいつから「お殿様」になったのか
    禁煙中 (04/12)
  • 海賊版は永遠に不滅です!? 〜現実の問題〜 (5)
    文理両道 (12/16)
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM